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乳酸菌体による遊離コレステロールの吸着作用

 日本乳酸菌学会の2007年度大会が、麻布大学で7月5〜6日の2日間開催さ
れ、多数の講演が行われましたが、そのうちホームメイド・ケフィアと関連して興味
のあった講演を紹介させていただきます。 

(茨城県工業技術センターの橋本先生の講演のスライド写真)

  上のスライド写真は、茨城県工業技術センター橋本先生の講演”乳酸菌体によ
る遊離コレステロールの吸着作用”から引用させていただきました。
  先生は、漬物から分離した乳酸菌の生理機能を研究するために、乳酸菌の血
中コレステロール低下作用について実験を行ったということです。
  血中コレステロールは、食物から摂取されるコレステロールと胆嚢から腸管に
分泌されるコレステロールが、腸壁を通じて血液に吸収されて体内を巡り、再び胆
嚢から分泌されています。これをコレステロールの腸管循環と呼びますが、一部の
コレステロールは腸管中で乳酸菌体に吸着されて体外に排泄されています。腸管
から排泄されるコレステロールの量が、血中コレステロール濃度の調節に役立って
いると言われています。
 漬物から分離される乳酸菌は、植物性乳酸菌と呼ばれて最近話題になっていま
すが、チーズやヨーグルトに使われている乳系乳酸菌と比較検討した結果が、上
のスライド写真です。
  先生の講演によりますと、植物性乳酸菌にコレステロール排泄機能が高いこと
を予想していましたが、結果はスライドに示すとおり、期待に反して乳系乳酸菌の
方がコレステロール排泄機能が高かったようです。乳系乳酸菌の中でも、ヨーグル
トなどに使われている乳酸桿菌よりも、チーズに使われている乳酸球菌すなわちラ
クトコッカス・ラクチスの方がコレステロールをより多く吸着して体外に排泄すること
がわかりました。さらにコレステロールの吸着に関しては、生菌でも加熱処理した
死菌でも変わらなかったということです。
  ホームメイド・ケフィアには、ラクトコッカス・ラクチス、ラクトコッカス・クレモリス、ラ
クトコッカス・ダイアセチラクチスを含んでいますが、これらのラクトコッカスは、胃酸
および胆汁酸耐性が弱く、生きたまま腸内に達しない。従って腸内の働きについて
はよくわからなかったが、橋本先生の講演を聞かせていただき、コレステロールを
吸着して排泄する働きがあることがわかった。(文責 中垣)