アロニア果汁摂取による遺伝子発現変化

山根拓也
第55回日本栄養・食糧学会近畿支部大会 

2016年10月22日

 

 

要旨 

アロニア果汁摂取による健康効果の一つとして、糖尿病・肥満改善効果があります。本果汁中に存在するシアニジン-3,5-ジグルコシドは、ジペプチジルペプチダーゼ IV (DPP IV) の活性阻害を介して、血糖値およびヘモグロビンA1c(HbA1c)値上昇抑制効果を示します。しかし、その抑制効果は果汁摂取と比較して弱く、これ以外にも抑制物質がアロニア果汁に存在することが示唆されています。そこで、本研究では、α-グルコシダーゼ阻害物質やシアニジン-3,5-ジグルコシド以外のDPP IV阻害物質をアロニア果汁中に探索しました。アロニア果汁成分を逆相カラムに吸着させ、溶出液のメタノール濃度を10%から50%まで10%おきに段階的に上げて、5分画を得ました。この5分画をそれぞれ濃縮乾固後、緩衝液で再溶解して活性測定に用いました。α-グルコシダーゼ阻害活性を測定した結果、分画1と2 に阻害活性が認められました。そこで、分画1に含まれる成分を逆相HPLCでさらに分離し、各ピーク成分のLC-MS/MSによる分析を現在進めています。

 

アロニア果汁摂取によりマウス肝臓においてIgfbp1 mRNA発現が増加することが明らかとなりました(図1)。

 
F1

図1 肝臓におけるIgfbp1 mRNA発現変化

 

また、肝臓におけるGadd45g mRNA発現もアロニア果汁摂取で増加しました。(図2)。

 
F2

図2 肝臓におけるGadd45g mRNA発現変化

 

以上の結果から、C Igfbp1、Gadd45g mRNAの発現変化はC57BL6とKKAyマウス肝臓において同様であり、Igfbp1、Gadd45gの転写調節に関与する成分がアロニア果汁に含まれていると考えられました。今後、これらの遺伝子の転写調節に関与する物質の同定を行う必要があります。