アロニア果汁摂取による
脂質異常症改善とその分子機構の解析

山根拓也
第71回日本栄養・食糧学会大会 

2017年5月19日~5月21日

 

要旨 

アロニアには糖尿病や高血圧といった様々な病気の改善・予防効果があることが見出され、報告されています。最近、我々はアロニア果実を摂取した高脂肪食(HFD)摂取マウスにおいて、血中LDL-コレステロール、中性脂肪の減少が起こることを見出しました。この時、アロニア果実を摂取したマウス肝臓においてHFD摂取によって減少したinsulin-like growth factor binding protein-1 (IGFBP1)発現が回復することを明らかにしました。本研究では、アロニア果汁を摂取したKKAyマウス肝臓、白色脂肪組織(WAT)における組織化学的変化を明らかにし、遺伝子発現への影響について検討することでアロニア果汁摂取による高脂血症改善の分子機構を明らかにすることを目的として実験を行ないました。KKAyマウスとアロニア果汁を摂取したKKAyマウスWATについて、HE染色を行ないました。さらにIGFBP1とLDL receptor (LDLR)のmRNA発現変化についてKKAyマウス臓器を用いて解析を行ないました。さらにHepG2細胞にアロニア果汁を添加し、LDLR mRNA発現の変化についても解析を行ないました。その結果、アロニア果汁を摂取したKKAyマウスおいて脂肪蓄積が減少しており、WATが小さくなっていることがHE染色により明らかとなりました。また、アロニア果汁を摂取させたKKAyマウス肝臓においてIGFBP1 mRNA発現は顕著に増加しませんでした。一方、LDLR mRNA発現はアロニア果汁を摂取させたKKAyマウス肝臓およびアロニア果汁を添加したHepG2細胞において顕著に増加しました。以上の結果からアロニア摂取による血中LDL-コレステロールの減少は肝臓におけるLDLRの発現増加によると考えられました。一方、KKAyマウス肝臓におけるIGFBP1 mRNA発現はアロニア果汁摂取によって顕著な増加が認められなかったことから、HFD摂取による肥満を原因とする初期の耐糖能異常期において働いていると考えられました。

 

最近の研究でアロニア果汁中に存在する血糖値及びHbA1c値上昇抑制物質としてcyanidin 3,5-diglucosideを同定していますが、アロニア果汁摂取に比べ抑制効果が低く、他のインヒビターの存在が示唆されています。そこで本研究ではα-グルコシダーゼもしくはcyanidin 3,5-diglucoside以外のDPP IV阻害物質を探索することを目的に実験を行ないました。まず、アロニア果汁を逆相カラムにて分離し、図1に示すように分画を行ないました
 
F1

図1 アロニア果汁摂取による脂肪蓄積減少効果

 

得られた分画についてα-グルコシダーゼ阻害活性を測定した結果、分画1と2 に阻害活性が認められました(図2)。

 

F2a

F2b

F2c

F2d

F2e

F2f

F2g

図2 各組織における遺伝子発現変化

 

一方、LDLR mRNA発現はアロニア果汁を摂取させたKKAyマウス肝臓およびアロニア果汁を添加したHepG2細胞において顕著に増加しました。(図3)。

 

F3a

F3b

F3c

 

図3 LDLR mRNA発現発現変化

 

以上の結果から、アロニア摂取による血中LDL-コレステロールの減少は肝臓におけるLDLRの発現増加によると考えられました。