シアニジン-3,5-ジグルコシド摂取による
血糖値上昇抑制と脂肪蓄積抑制の検討

山根拓也
第73回日本栄養・食糧学会大会 

2019年5月17日~5月19日

 

要旨

アロニアにはポリフェノールが多く含まれ、ガンや生活習慣病などに様々な健康効果があることが報告されています。我々は、これまでの研究でアロニア果汁に含まれるシアニジン-3,5-ジグルコシドがジペプチジルペプチダーゼIV(DPP IV)を阻害することを明らかにし、2型糖尿病・肥満モデルであるKKAyマウスにアロニア果汁を摂取させると、DPP IVとα-グルコシダーゼの活性が小腸で阻害されることを明らかにしてきました。本研究では、KKAyマウスにシアニジン-3,5-ジグルコシドを摂取させ、DPP IV活性が阻害されるかについて検討を行ないました。KKAyマウスを水摂取群(コントロール群)、アロニア果汁摂取群(アロニア群)、シアニジン-3,5-ジグルコシド摂取群(Cy-dg群)の3群に分け、49日間飲用させた結果、血糖値およびヘモグロビンA1c (HbA1c) 値はアロニア群、Cy-dg群では上昇が抑制され、その減少割合はCy-dg群ではアロニア群の約50%程度でした。また、血中のDPP IV活性について測定したところ、アロニア群、Cy-dg群で活性が阻害され、Cy-dg群での阻害率はアロニア群の50%程度でした。血中の活性型glucagon-like peptide-1 (GLP-1) 濃度はアロニア群、Cy-dg群で上昇し、Cy-dg群での上昇率はアロニア群の50%程度でした。これらの結果から、DPP IVによるGLP-1の分解・不活化がシアニジン-3,5-ジグルコシドにより阻害され、血糖値、HbA1c値の上昇を抑制したと考えられました。一方、アロニア群では白色脂肪組織重量および肝臓含有中性脂肪の減少が確認されましたが、Cy-dg群では認められませんでした。これらの結果について報告します。

 
これまでにアロニア果汁摂取による2型糖尿病改善効果については以下に示すような報告があります。
F1

得られた分画についてα-グルコシダーゼ阻害活性を測定した結果、分画1と2 に阻害活性が認められました(図2)。

 
F2

図2 α-グルコシダーゼ阻害活性

 

そこで分画1に含まれる成分を逆相HPLCでさらに分離し、各ピーク成分を分取しました(図3)。

F3

 

 

図3 分画(F1)の分離および分取

 

LC-MS/MSによる分析した結果、カフェオイルキナ酸がこの分画に含まれていることが判明しました。今後、この分画による2型糖尿病への効果およびメカニズムを解明していく必要がある。