ケフィアニュース

Volume 29.Number 1(October 1.2022)

プロバイオティクスGBN1のリニューアル

 プロバイオティクスGBN1はブルガリアのヨーグルトから分離した乳酸菌GBN1に因んだ商品名ですが、プロバイオティクスを強調するために商品名を変更することにしました。プロバイオティクスは「腸内細菌叢のバランスを改善することにより人に有益な作用をもたらす生きた微生物」と定義されています。簡単にいいますと「善玉菌優勢の腸内細菌叢を形成する微生物」ということで、善玉菌の代表はビフィズス菌です。プロバイオティクスGBN1はビフィズス菌を豊富に含有した家庭でビフィズス菌ヨーグルトを発酵できるプロバイオティクス・スターター(種菌)です。その特徴をよりわかり易くするために、ビフィズス菌をイメージするプロバイオティクスBIFIYに商品名を変更します。

プロバイオティクス、プレバイオティクス、
シンバイオティクス

上述の通りプロバイオティクスBIFIYは腸内で善玉菌優勢の細菌叢を形成するプロバイオティクス・スターターです。腸内で善玉菌を増やす食物をプレバイオティクスといいます。その代表は食物繊維ですが、ホームメイド・ヴィーリは発酵によって食物繊維(EPS)をつくり、そのEPSは善玉菌の栄養源となって、酪酸菌などの善玉菌優勢の細菌叢の形成に役立ちます。ホームメイド・ヴィーリはプレバイオティクス・スターターです。
 プロバイオティクスとプレバイオティクスの両方の働きをすることをシンバイオティクスといいます。ホームメイド・ケフィアには生きたまま腸に達して善玉菌の働きをする乳酸菌カゼイ菌とプランタラム菌を含有するのでプロバイオティクス・スターターです。また弊社の研究によりホームメイド・ケフィアで発酵させたケフィアを食べると腸内に本来存在するビフィズス菌を増やす効果があることがわかりましたのでプレバイオティクスの働きもあります。したがってホームメイド・ケフィアはプロバイオティクスとプレバイオティクスの両方の働きをするシンバイオティクス・スターターです。

 

プロバイオティクスBIFIY発売までの長い道程

私のビフィズス菌研究の軌跡

有限会社中垣技術士事務所
代表取締役 中垣剛典

1)豆乳のビフィズス菌発育促進物質の研究

ビフィズス菌は1988年にフランスのパスツール研究所のテッシュ博士によって、母乳栄養児の糞便からはじめて分離されました。母乳栄養児の糞便はビフィズス菌優勢ですが人工栄養児の糞便にはビフィズス菌が見つからなかったことから、人工栄養児よりも母乳栄養児は病気にかかりにくいのはビフィズス菌の効果と推察されました。そのためにビフィズス菌の発育促進物質(以下、ビフィズスファクターという)の探索が盛んに行われるようになり、特に育児用調製粉乳を販売している会社は、自社の調製粉乳にビフィズスファクターを加えて母乳に近い調製粉乳をつくる研究をしていました。
 京都大学の平野茂博博士は、母乳中のビフィズスファクターの研究をしていましたが、私は京都大学に近い琵琶湖畔にあった日本酪農協同(毎日牛乳)の中央研究所に勤務していましたので、岐阜大学の先輩でもあった平野博士の研究を手伝うことになったのが、私がビフィズス菌に出会った最初でした。平野博士が母乳から分離した物質を培地に加えてビフィズス菌を培養し、ビフィズス菌数の測定をするテストをしていました。その研究は平野博士と連名で学術雑誌に投稿して戴きました(J.Biochem.64:563-565.1968)。
当時、私は乳酸菌や豆乳の研究をしていましたので、試しにビフィズス菌を豆乳に加えて発酵させてみました。すると驚いたことに豆乳中でビフィズス菌が繁殖することがわかりました。それで私は豆乳に含まれるビフィズスファクターの抽出精製を試みました。いろいろなクロマトグラフを試みましたが、チャコールに吸着溶出することで、ビフィズスファクターの濃縮が出来ることがわかりましたので、とりあえず特許を出願しました。平野博士に相談すると大豆から抽出するよりも構造決定して合成しようと言われ、大豆抽出物からビフィズスファクター活性のある化合物を結晶させ、平野博士に赤外線分析(IR)や核磁気共鳴(NMR)、質量分析(MS)を使って構造を決定していただく研究を進めていましたが、ビフィズスファクターとして活性のある結晶を作ることが難しくなかなか研究が進まずにいるうちに、平野博士が京都大学からアメリカの大学に移ることになり研究も中断しました。
 ビフィズスファクターの抽出方法の特許を出願していましたので、大豆から抽出精製したビフィズスファクターを加えた牛乳の販売を社長に提案しましたが受け入れられず、研究の継続は難しくなりました。申請した特許が公開されると20ページにも及ぶ異議申請がありました。弁理士から異議に対して意見書を出すことを求められましたが、会社の経営方針と私の研究が相容れませんでしたので、異議申請に意見書を提出することなく、会社を退職しました。
 それから20年後に、カルピスから大豆オリゴ糖のビフィズスファクターに関する研究論文が発表されました(Microb.Ecol.Health Dis.3:.293-301.1990 )。

2)ビフィズス菌入りドリンクヨーグルトの発売

1980年代の日本の乳業界の趨勢は、ビフィズス菌を含むヨーグルトの開発競争でした。
 森永乳業は“ビヒダス”を発売、ヤクルトから“ミルミル”が発売されました。
 当時、私は関西ルナ(現在、日本ルナ)の研究所に勤務していましたが、理化学研究所の光岡知足博士からビフィズス菌の分譲を受け、ビフィズス菌入りのヨーグルトを開発していました。しかしヨーグルトを発酵させる乳酸菌は通性嫌気性菌ですが、ビフィズス菌は極端に酸素を嫌う偏性嫌気性菌ですから、研究室では培養することが出来ても、ヨーグルトの生産規模で嫌気状態を保つのが難しく、またビフィズス菌は栄養要求も厳しくて、牛乳中でビフィズス菌数を増やすことは困難でした。ヨーグルトの生産は先ずスターターを作って、牛乳に添加します。ビフィズスヨーグルトの生産にあたり、ビフィズス菌の栄養要求を満たす培地を作り、嫌気条件で極限までビフィズス菌数を増やしたスターターを研究室で製造して工場に渡し、それを生産に使用することによってビフィズス菌を含有したヨーグルトの製造に成功しました。
 “ビヒダス”や“ミルミル”は無糖のプレーンヨーグルトですが、関西ルナは“のむヨーグルト”の商品名で、甘くて美味しい加糖ドリンクタイプで発売しましたので、これは乳業界を席巻する大ヒット商品になりました。
 “のむヨーグルト”の発売間もなく、岐阜大学の先輩の川島拓司博士から電話がありました。川島博士は森永乳業の生命科学研究所長でしたが、日本ビフィズス菌協会の事務局の仕事もしていました。電話は日本ビフィズス菌協会の設立のための資金協力でした。関西ルナにとって負担が大きい金額でしたが、ビフィズス菌を分譲していただいた光岡博士が進めている事業であり、“のむヨーグルト”の販売も好調でしたから稟議書はすんなり決裁されました。
 “のむヨーグルト”の次の商品の開発のために、私は業界紙の主宰する欧州デザートツアーに参加し、ドイツで開催されていた食品見本市アヌーガと、オランダ、デンマーク、ドイツ、スイス、フランスのヨーグルト市場の視察をしました。アヌーガでは発酵乳の新製品としてケフィアが数社から出展されていました。工場見学をしたスイスのトニー乳業では、ケフィア新発売のキャンペーン中で、新製品のケフィアの試食も出来ました。日本の乳業界では幻の発酵乳と呼ばれるケフィアを試食して、乳業会社からツアーに参加した同行者は一様に驚嘆し感激していました。ツアーに参加した乳業会社は一斉にケフィアの開発を始めることになりましたが、私たち関西ルナは最も早く発売しました。
 ケフィアとヨーグルトの違いは、ヨーグルトは乳酸菌だけで発酵させるが、ケフィアは酵母と乳酸菌で発酵させるので、酵母の発酵によって生じる炭酸ガスのコントロールが課題でした。ヨーロッパでは炭酸ガスをリークさせるためにピンホールを開けて販売していましたが、日本の法律では発酵乳の容器は密閉しなければなりません。ケフィアを発売した各社はそれぞれに工夫を凝らしましたが、一様に炭酸ガスのコントロールに失敗し、市場から撤退することになりました。私はケフィア発売の失敗の責任をとって取締役研究開発部長を辞任し、関西ルナを退社しました。

3)ホームメイド・ケフィア、ケフィアプラスの発売

発酵したケフィアを販売すると、上述のように食品衛生法の容器規定にかかるのであれば、ケフィアスターターを販売して家庭で発酵させることが出来ないかと考え、当時通産省にあった新技術開発相談室に相談したところ、自家消費する場合には容器規定は関係ないという返事でした。ケフィアスターターの販売に問題ないことがわかったので会社を創業した1991年に、自社商品として“ホームメイド・ケフィア”を発売しました。発売後数年を経て、“ホームメイド・ケフィア”がマスメディアに大きく取り上げられ、チェスコの販売ルートを通じて全国に販路が広がり、大ヒット商品になりました。

 弊社もまた川島博士に勧誘され、日本ビフィズス菌協会に賛助会員として加入しました。川島博士から“ホームメイド・ケフィア”にビフィズス菌BB536(ビフィドバクテリウム ロンガムBB536、以下ビフィズス菌BB536という)を添加することを勧められましたが、弊社の研究によって“ホームメイド・ケフィア”で牛乳や豆乳を発酵させたケフィアを食べると、腸内でビフィズス菌が増えることがわかっていました(Bioscience of Microbiota, Food and Health Vol. 36 (1), 33–37, 2017)。“ホームメイド・ケフィア”にはビフィズス菌が入っていませんが、“ホームメイド・ケフィア”で発酵させたケフィアを食べると腸内でビフィズス菌が増えるので、“ホームメイド・ケフィア”にビフィズス菌を加える必要がありません。
 弊社には発酵させるのが面倒な人のために開発した“ケフィアプラス”があります。カプセルに詰めたケフィア菌をそのまま飲むタイプです。“ホームメイド・ケフィア”のように発酵させないので腸内でビフィズス菌が増えませんから、川島博士にお勧めに従って“ケフィアプラス”にビフィズス菌BB536を加えることにしました。研究データの豊富なビフィズス菌BB536を加えることによって“ケフィアプラス”は機能性表示食品として登録出来ました。

4)プロバイオティクスGBN1からプロバイオティクスBIFIYへ

2009年、私はマリア・ヨトヴァ博士(現・立命館大学食マネジメント学部准教授)の案内でブルガリアを訪問し、マリア・コンドラテンコ博士を紹介されました。博士はブルガリア国立乳酸菌研究所の元所長で、日本にブルガリアヨーグルトを紹介したブルガリア側の当事者でした。退職後はゲネジス研究所を創設し乳酸菌の研究を続けておられましたが、現在はご子息夫婦に引き継がれています。
 私がブルガリアを訪れた目的は、“ホームメイド・ケフィア”の姉妹品として“ホームメイド・ヨーグルト”を発売することでした。ゲネジス研究所のスベトラナ・コンドラテンコ所長に相談すると、マリア・コンドラテンコ博士がブルガリアの家庭で伝統的に作られているヨーグルトから分離したラクトバチルス・ブルガリクスGBN1に、スベトラナ・コンドラテンコ所長が研究しているビフィズス菌を加えたプロバイオティクス・スターターを勧めてくれました。私はブルガリアのヨーグルト本来の美味しさに新しい科学を加味するゲネジス研究所の考え方に共感し、その場でプロバイオティクス・スターターの購入を決めました。コレステロール低下作用があるという乳酸菌ラクトバチルス・ブルガリクスGBN1に因んで、商品名を“プロバイオティクスGBN1”に決めました。
 “プロバイオティクスGBN1”で牛乳を発酵させると、本場ブルガリアヨーグルトの声価に違わぬ美味しいヨーグルトが作れました。乳酸菌数とビフィズス菌数を測定すると、乳酸菌数はヨーグルトを発酵するために十分な菌数でしたが、私は関西ルナの“のむヨーグルト”開発の研究から“発酵したヨーグルトのビフィズス菌数はスターターのビフィズス菌数によって決まる”ことを知っていましたので、“プロバイオティクスGBN1”のビフィズス菌数は十分ではないと思いました。ビフィズス菌と乳酸菌で共生発酵する場合、ビフィズス菌の増殖速度は乳酸菌より遅いので、スターターの菌数はビフィズス菌数を乳酸菌数よりも多くしなければなりません。私は“ケフィアプラス”に加えたビフィズス菌BB536を加えて“プロバイオティクスGBN1”のビフィズス菌数を増やすことを考えました。偏性嫌気性菌であるビフィズス菌は極端に酸素を嫌うので家庭で発酵させるのは難しいが、ビフィズス菌BB536は“ケフィアプラス”のようなサプリメントに用いても、長期間ビフィズス菌数を維持できる比較的酸素に強いビフィズス菌ですから“プロバイオティクスGBN1”に加えるビフィズス菌として適しています。
 ビフィズス菌BB536を加えた“プロバイオティクスGBN1”の菌数を第1図に示します。第1図を見ると、ビフィズス菌数は乳酸菌数の約2.5倍、総菌数の4分の3をビフィズス菌が占めています。家庭でヨーグルトを発酵させるスターターでビフィズス菌数が“プロバイオティクスGBN1”を超えるヨーグルトスターターはないと自負しています。

第2図にビフィズス菌BB536を加えた“プロバイオティクスGBN1”で牛乳と豆乳を発酵させて乳酸菌数とビフィズス菌数を測定した結果を示します。
 第2図をみると、牛乳で発酵させるよりも豆乳で発酵させるとビフィズス菌が3桁以上多いことがわかります。“プロバイオティクスGBN1”は豆乳を発酵させるのに適しています。豆乳にビフィズスファクターが存在することを発見した私の研究が、50年経って実際に“プロバイオティクスGBN1”を買っていただいたお客様の健康に役立つことがわ

かったことは、望外の喜びです。

 “プロバイオティクスGBN1”は家庭でビフィズスヨーグルトを発酵できる国内屈指のスターター(種菌)です。そのことを一人でも多くの方に知っていただくために、そして一人でも多くの方に利用していただいて健康になっていただきたいために、商品名を“プロバイオティクスGBN1”から“プロバイオティクスBIFIY”に変更することにしました。
BIFIYはビフィズス菌をイメージしやすいようにBifidobacteriumのBifiとYogurtのYを組み合わせた造語です。ビフィイと読んでください。
“プロバイオティクスGBN1”をご愛用いただいている皆様、商品名は変わっても中身は変わっていません。引き続き “プロバイオティクスBIFIY”をご愛顧いただきますようよろしくお願いいたします。
(註)文中の会社名から株式会社を省かせていただきました。

 

あとがき

 ビフィズス菌の研究を切り口に来し方を振り返ってみると、過去の研究が後の商品開発に繋がっています。他にも“NAG100スイート”は、京都大学の平野博士が母乳から分離したN-アセチルグルコサミンを、後に商品化したものです。大阪大学理学部で研究生として呼吸酵素チトクロームCを研究していた当時、アメリカでチトクロームCの補酵素としてコエンザイムQ10が発見されました。心臓病の治療薬として販売されていたコエンザイムQ10が、治療から予防へという流れで食薬区分が変更になり、食品として販売できるようになったとき、チトクロームCの研究でお世話になっていた大阪大学蛋白質研究所の元所長堀尾博士に相談して商品化したのが“Q10パウダー”です。
 私は“商品開発は科学的でなければならない”と考えています。科学技術の進歩を食生活に活かすことが食品の新製品開発ビジネスの本質であると思っています。
 ここ数年、プロバイオティクス、プレバイオティクス、シンバイオティクスや腸内細菌叢に関する研究論文が急増しています。私は出来るだけ関連分野の研究論文に眼を通し、新しい知識を吸収することを楽しみにしています。
 時に皆さんの健康に役立つと思われる研究論文を見つけるとホームページで紹介しています。正確を期するためにほとんど直訳ですから読みやすいとはいえませんが、ご関心のある方はホームページのトップページを下にスクロールして“発酵乳・腸内細菌の科学:研究の最前線”をクリックしてください。

アロニア果汁摂取によるアルツハイマー病予防の可能性

大阪大学大学院工学研究科
生物工学専攻高分子バイオテクノロジー領域
特任准教授・博士(医学)山根拓也

 アルツハイマー病は進行性の神経変性疾患であり、経済的コストやQOL(クオリティ・オブ・ライフ)コストが非常に高い疾患です。世界では、5,500万人がアルツハイマー病やその他の認知症を患っています。アルツハイマー病は、認知症患者の60~80%を占めています[1]。したがって、機能性成分を含む毎日の食事の摂取は、早期アルツハイマー病の予防のために非常に重要であると考えられています。
 アロニア(Aronia melanocarpa)は、ヨーロッパではメディカルフルーツとして知られています。アロニア果汁の健康に対する有益な効果はよく研究されていますが、神経変性疾患に対する効果については未だ不明な点が多く残されています。そこで本研究では、家族性アルツハイマー病モデルマウスを用いてアロニア果汁摂取における効果について検討を行ったので、その研究結果をご紹介します。
 現在、アルツハイマー病の発症には4つの仮説が提唱されています。すなわち、アミロイド仮説、コリン作動性仮説、ミトコンドリア・カスケード仮説、そして酸化ストレス仮説です。

 

アミロイド仮説

 神経細胞の死にはアミロイド前駆体タンパク質(APP)が関与しているとするものである。この仮説では部分的に凝集した可溶性Aβ(アミロイドベーター、以下Aβと記載)の沈着が神経毒のカスケードを引き起こし、それによって神経変性とアルツハイマー病を引き起こすと仮定している。アミロイド仮説はアルツハイマー病の最もよく定義された、最も広く受け入れられている説である。

コリン作動性仮説

 コリン作動性システムの主要な神経伝達物質はアセチルコリン(ACh)であり、記憶と学習に重要な役割を果たす。コリン作動性システムは、アルツハイマー病につながる機能的プロセスに強く関与していることが提唱された。記憶障害や認知症がアルツハイマー病の主症状であることから、「コリン作動性仮説」が登場し、中枢神経系におけるコリン作動性機能の低下が、高齢やアルツハイマー病に伴う認知機能の低下に大きく寄与していると本質的に考えるようになった。

ミトコンドリア・カスケード仮説

 ミトコンドリアは真核生物の小器官であり、カルシウムの恒常性維持、カルシウムシグナル伝達への関与、内在性アポトーシスの制御などの役割を担っている。一般に、ミトコンドリアの機能は加齢とともに低下することが知られている。ミトコンドリア機能不全は脳で報告されており、ミトコンドリア・カスケード仮説が生まれた。

酸化ストレス仮説

 酸化ストレスはアルツハイマー病の病因や病態の進行に密接に関係している。脳は他の臓器に比べ抗酸化物質が少ないため、酸化ストレスを受けやすく、アルツハイマー病発症初期において酸化的損傷を非常に受けやすいという説である。

 このようにいくつかの発症仮説が提唱されているアルツハイマー病はその発症を予防するための手段が求められており、私たちはアルツハイマー病のモデルマウス(5xFADマウス)にアロニア果汁を飲用させることにより、予防が出来ないか検討を行いました。
 認知機能の改善を測定する試験は色々ありますが、今回私たちはY迷路試験という方法を用いて予防効果の検討および評価を行いました。図1に試験に用いたY迷路の写真を示します。マウスがY迷路内を進路探索(自発的交替行動)する際に、直前に入ったアームとは違うアームに入ろうとする習性を利用した試験です。違う3本のアームに連続で入るには少なくとも2回前まで侵入したアームを記憶している必要があり、これは作業記憶と考えられているため、この試験で認知能力を測定することが出来ると考えられています。

 本研究では、アロニア果汁をアルツハイマー病モデルマウスに84日間経口投与した後、Y迷路試験を行ないました。その結果、アロニア果汁を与えたアルツハイマー病モデルマウスの自発的交替行動はアロニア果汁を与えていないアルツハイマー病モデルマウスと比較して20%以上改善され、アルツハイマー病でないマウス(コントロール)と同じレベルになりました(図2)。

 さらに大脳のAβ蓄積の改善を調べるために抗Aβ抗体を用いて免疫組織化学染色を行いました。その結果、アロニア果汁を摂取したアルツハイマー病モデルマウスにおいて、大脳におけるAβの蓄積が抑制されていることが明らかとなりました。この結果は、アロニア果汁の摂取がアルツハイマー病の大脳におけるAβ蓄積の減少に有益であることを示しています(図3)。

 前述のとおりアルツハイマー病は脳内にAβ蓄積することが原因になりますが、Aβはδ-セクレターゼという酵素がタンパク質を分解することによって生じます。したがってこの酵素活性を阻害すればアルツハイマー病を予防できる可能性があります。次にアロニア果汁によるδ-セクレターゼ阻害活性を調べるために、アロニア果汁を与えていないアルツハイマー病モデルマウスとアロニア果汁を与えたアルツハイマー病モデルマウスの脳内のδ-セクレターゼ活性を測定しました。その結果、アルツハイマー病モデルマウスの脳において、δ-セクレターゼ活性が増加しており、アロニア果汁の摂取により活性上昇が抑制され、アルツハイマー病でないマウス(コントロール)と同じレベルになることが明らかとなりました(図4)。

 さらに、アロニア果汁に含まれるδ-セクレターゼ阻害物質を調べるために逆相高速液体クロマトグラフィーで分離後、質量分析計を用いて同定を行いました。その結果、ケルセチン3-O-ルチノシド(ルチン)、ケルセチン3-O-ガラクトシド(ヒペロシド)、ケルセチン3-O-グルコシド(イソケルセチン)が含まれていることが明らかとなりました(図5)。
 ケルセチンおよびその配糖体であるルチン、イソケルセチンを含む天然物としては、ブルーベリー、コリアンダー、ゴツコラ、セントジョーンズワートなどが報告されています。これらの天然物は,抗酸化作用,抗アミロイド作用など,神経保護に有益な作用を持っています[2-5]。

 先行研究において、ルチンはAβ42の線維化を抑制し、ヒト神経芽腫SH-SY5Y細胞においてAβ42による細胞毒性を減弱させる効果があります[6,7]。さらに、ルチンを摂取したアルツハイマー病モデルラットでは認知障害が改善され[8]、同様にルチンを摂取したアルツハイマー病トランスジェニックマウスの脳内ではAβオリゴマーレベルが減少しました[9]。
 ヒペロシドは、過酸化水素によるPC12細胞(未分化神経細胞のモデル細胞)の細胞毒性を防御し、PC12細胞のアポトーシス(細胞死)を減少させました[10]。ヒペロシドはまた、アルツハイマー病モデルマウス(APP/PS1マウス)の空間記憶と空間記憶能力の認知機能を改善しました[11]。
 イソケルセチンは、PC12細胞の酸化ストレスを軽減し、コルヒチンを投与したラットの脳内のAβの含有量を減少させました[12]。
 これらの先行研究および本研究の結果はアロニア果汁に含まれるケルセチン配糖体が、神経保護作用およびδ-セクレターゼ阻害作用を通じてアルツハイマー病の進行を予防することを示しています。

 

●まとめ

※本研究紹介はJournal of Agricultural and Food Chemistry誌に投稿中の内容を分かりやすくまとめたものです。

参考文献

  1. [1] Alzheimer’s_Association,(2020). Alzheimer’s Association 2020 Alzheimer’s and Dementia. Available online at https://www.alz.org/alzheimer_s_dementia (accessed June 10, 2022).
  2. [2] Papandreou MA, Dimakopoulou A, Linardaki ZI, Cordopatis P, Klimis-Zacas D, Margarity M, et al. Effect of a polyphenol-rich wild blueberry extract on cognitive performance of mice, brain antioxidant markers and acetylcholinesterase activity. Behav Brain Res 2009;198:352–8.
  3. [3] Cioanca O, Hritcu L, Mihasan M, Hancianu M. Cognitive-enhancing and antioxidant activities of inhaled coriander volatile oil in amyloid beta(1-42) rat model of Alzheimer's disease. Physiol Behav 2013;120:193–202.
  4. [4] Dhanasekaran M, Holcomb LA, Hitt AR, Tharakan B, Porter JW, Young KA, et al. Centella Asiatica extract selectively decreases amyloid beta levels in hippocampus of Alzheimer's disease animal model. Phytother Res 2009;23:14–9.
  5. [5] Brenn A, Grube M, Jedlitschky G, Fischer A, Strohmeier B, Eiden M, et al. St. John's wort reduces Beta-amyloid accumulation in a double transgenic Alzheimer's disease mouse model-role of P-glycoprotein. Brain Pathol 2014;24:18–24.
  6. [6] Jimenez-Aliaga K, Bermejo-Bescos P, Benedi J, Martin-Aragon S. Quercetin and rutin exhibit antiamyloidogenic and fibril-disaggregating effects in vitro and potent antioxidant activity in APPswe cells. Life Sci 2011;89:939–45.
  7. [7]Wang SW, Wang YJ, Su YJ, Zhou WW, Yang SG, Zhang R, et al. Rutin inhibits betaamyloid aggregation and cytotoxicity, attenuates oxidative stress, and decreases the production of nitric oxide and proinflammatory cytokines. Neurotoxicology 2012;33:482–90.
  8. [8]Thibault O, Gant JC, Landfield PW. Expansion of the calcium hypothesis of brain aging and Alzheimer's disease: minding the store. Aging Cell 2007;6:307–17.
  9. [9]Prusiner SB. Novel proteinaceous infectious particles cause scrapie. Science 1982;216:136–44.
  10. [10]Liu Z, Tao X, Zhang C, Lu Y, Wei D. Protective effects of hyperoside (quercetin-3-o-galactoside) to PC12 cells against cytotoxicity induced by hydrogen peroxide and tert-butyl hydroperoxide, Biomed Pharmacother. 2005 Oct;59(9):481-90.
  11. [11]Chen L, Zhou YP, Liu HY, Gu JH, Zhou XF, Yue-Qin Z. Long-term oral administration of hyperoside ameliorates AD-related neuropathology and improves cognitive impairment in APP/PS1 transgenic mice, Neurochem Int. 2021 Dec;151:105196.
  12. [12]Yang Q, Kang ZH, Zhang J, Qu F, Song B. Neuroprotective Effects of Isoquercetin: An In Vitro and In Vivo Study, Cell J. 2021 Aug;23(3):355-365.

NAG100スイートが機能性表示食品に登録されました

【届出番号】G1119
【届出表示】本品にはN-アセチルグルコサミンが含まれます。N-アセチルグルコサミンには、歩行時におけるひざ関節の違和感の軽減をサポートする機能があることが報告されています。
【根拠論文】プラセボ対象ランダム化二重盲検並行群間比較によるN-アセチルグルコサミンの摂取が健常者のひざ関節の違和感に及ぼす効果および安全性確認試験
久保村大樹、Pharmacometrics 99 (3/4)71-77(2020)
(試験方法)ひざ関節に違和感・痛みのある20~70歳の男女98名を、試験群49名、対照群49名に分け、試験群はN-アセチルグルコサミン500mg含有する錠剤を毎日1錠を摂取し、対照群の摂取する錠剤にはN-アセチルグルコサミンを含有しない。摂取開始日(0週)と摂取開始後4、8、12週毎に、医師が“疼痛・歩行能力”、“疼痛・階段昇降能力”、“屈曲角度および強直・高度拘縮”、“腫脹”について評価し、JOAスコアで示しました。JOAスコアは日本整形外科学会の制定した整形外科的な身体機能の判定基準として用いられる評価表です。

(結果)JOAスコアの推移を図に示します。試験群は対照群と比べ12週間後に有意に高いスコアが認められた。このことから軽度な関節症状がある健常者がN-アセチルグルコサミンを摂取することで、膝関節機能が改善することが示された。
(注)上記試験では、N-アセチルグルコサミンの1日当たり摂取量は500mgですが、NAG100スイートは、純粋のN-アセチルグルコサミンが1パックに1000mg入っていますので、1日当たり摂取量は上記試験の2倍になります。

ブランドの
オリジナル商品について、価格改定のお願い

ホームメイド・ケフィア、ホームメイド・ヴィーリ、プロバイオティクス・ビフィイの自社オリジナル商品について、11月1日から小売価格を10%値上げさせていただきたくよろしくお願いいたします。

従来価格
(1箱)税込
11月1日以降の価格
(1箱)税込
ホームメイド・ケフィア 1,306円 1,437円
ホームメイド・ヴィーリ 1,306円 1,437円
ホームメイド・ビフィイ 1,306円 1,437円

 値上げは本意ではありませんが、海外から輸入している乳酸菌カルチャーなどの値上がりと、急激な為替変動(円安)のために、弊社の原料輸入コストが現状において30%程度高くなっている上に、国内調達の包装資材も10~15%程度値上がりしました。弊社においても出来る限り合理化を進めコストダウンに努めていますが、新型コロナの蔓延、ウクライナ戦争に伴う燃料・食糧の高騰など経済環境の悪化に抗しきれず、やむなく値上げのお願いをせざるを得ない状況に至りました。永年ご愛顧頂いている皆様には誠に申し訳なく存じますが、何卒ご理解賜りますようよろしくお願い申し上げます。

 有機アロニア100%果汁は、今年収穫の果汁は年末に入荷しますので、その時点で価格改定をお願いすることになると思います。ケフィアプラス、NAG100スイート、Q10パウダーなどのサプリメント、ジャムやハチミツ、ナッツ、オリーブオイルなどの食品および発酵器具については現状価格を維持したいと思いますが、諸般の事情で価格改定やむなしとなった場合は、オンラインショップに掲載いたしますのでよろしくお願いいたします。

【編集後記】

 弊社の研究所長山根拓也博士が、大阪大学大学院工学研究科の特任准教授に就任しました。研究環境の整った大阪大学で研究したいという山根博士の意向を尊重し、大阪府立大学内に間借りしていた研究所を閉鎖して、大阪大学と共同研究を行うことになりました。アロニア果汁の機能性成分の研究や、ケフィアやヨーグルト、ヴィーリなど発酵乳の生理活性成分の研究は今後も継続いたします。
 “アロニア果汁摂取によるアルツハイマー病予防の可能性”は有機アロニア100%果汁の愛用者には朗報です。今後はヒトを対象として認知症の予防効果を確認しなければならないと思っています。  

(編集子 中垣剛典)

Volume 29 Number 1 (October 1. 2022)
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