アロニアジュースに含まれる
ジペプチジルペプチダーゼIVインヒビターの同定

Miyuki Kozuka, Takuya Yamane,

Yoshihisa Nakano, Takenori Nakagaki,
Iwao Ohkubo, Hiroyoshi Ariga

 

Biochemical and Biophysical Research Communications 465 (2015) 433e436

 

要約

 アロニア果実には期待される様々な健康効果が報告されている。例えば抗酸化作用、肝臓や血管の保護、抗糖尿病効果、大腸ガン細胞分化の阻害などである。さらにアロニアジュースには糖尿病のヒトやラットにおいて血糖値の改善効果があることが示されている。我々はアロニアジュースがジペプチジルペプチダーゼIVインヒビター(DPP IV)阻害活性を有することを見出した。本研究では新しいDPP IVインヒビターとしてシアニジン3,5-ジグルコシドを同定した。我々の結果と以前の研究結果はシアニジン3,5-ジグルコシドがアロニアジュースに存在する新しいDPP IVインヒビターであることを示唆している。

はじめに

  アロニア果実には期待される様々な健康効果が報告されている。例えば抗酸化作用、肝臓や血管の保護、抗糖尿病効果、大腸ガン細胞分化の阻害などである[1]。さらにアロニアジュースには糖尿病のヒト[2]やラット[3]において血糖値の改善効果があることが示されている。しかし、そのメカニズムは明らかとなっていない。ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP IV)[EC 3.4.14.5]はセリンプロテアーゼであり[4]、グルカゴン依存性インシュリノトロピックポリペプチド(GIP)やグルカゴン様ペプチド‐1(GLP-1)のようなインクレチンのN末端領域を切断する機能を有しており、DPP IVによるインクレチンの不活化によってインシュリン分泌の減少が引き起こされる[5-8]。DPP IVインヒビターは糖尿病患者の血糖値改善効果を有している[9]。また、DPP IVインヒビターはいくつかの植物で見出されている[10]。
 本研究において、我々はアロニアジュースにDPP IV阻害効果があることを見出した。さらに我々はアロニアジュースに含まれるインヒビターとしてシアニジン 3,5-ジグルコシドを同定した。DPP IVはシアニジンやシアニジン 3-グルコシドよりもシアニジン 3,5-ジグルコシドによって強く阻害を受けた。アロニアジュースの抗糖尿病効果はシアニジン 3,5-ジグルコシドによるDPP IV阻害を介して起こるのかも知れない。

結果

アロニアジュースにおけるDPP IV阻害活性

アロニアジュースにおけるDPP IV阻害活性を試験するために、DPP IV活性をGly-Pro-MCAを基質として測定した。その結果、Fig. 1Aに示すように、DPP IV阻害活性はアロニアジュースにおいて検出され、コントロールと比較して27%阻害された

アロニアジュースからのDPP IVインヒビターの抽出

DPP IVインヒビターをアロニアジュースから抽出するため、アロニアジュースをカラムクロマトグラフィーによって分画した。Fig. 1Bに示すようにDPP IV阻害活性はSupel Sphere Carbon/NH2 SPE Cartridgeと結合しない分画ではなく、0.2 M NaClで溶出した分画に見られ、その阻害活性は28%であった。さらにその分画を逆相クロマトグラフィーで分離した結果、4つの分画が得られた(Fig. 2A)。Fig. 2Bに示したように、DPP IV阻害活性は分画2において検出され、その阻害活性は81%であった。

アロニアジュースにおけるDPP IVインヒビターの同定

DPP IVインヒビターを同定するためにUPLC-XevoG2 Qtofにて測定を行った。Fig. 3Aに示すようにメインピークの分子量は635.74であり、451.56と289.38 m/zのフラグメントピークがメインピークのMS/MSピークから得られた。451.56と289.38 m/zのピークはそれぞれ、シアニジン 3-グルコシドとシアニジンとして同定されたので、635.74と613.74 m/zのピークはシアニジン 3,5-ジグルコシドとして同定された[11-13]。

シアニジン 3,5-ジグルコシドのIC50測定

DPP IV活性がシアニジン 3,5-ジグルコシドによって阻害されるかを試験するために、合成基質Gly-Pro-MCAを用いてアッセイを行った。その結果、Fig.4に示すようにDPP IV活性は0.5 mM シアニジン 3,5-ジグルコシドによって阻害され、シアニジン或いはシアニジン 3-グルコシドによっては阻害を受けなかった。シアニジン 3,5-ジグルコシドのIC50値は5.5 μMと見積もられた。

考察

 アロニアジュースは血糖値を改善する効果を有することが既に示されているにもかかわらず、そのメカニズムは不明のままである。GLP-1とGIPはDPP IVによって迅速に不活化される[14]。我々はアロニアジュースがDPP IV阻害活性を有することを見出した。DPP IVインヒビターは食品や食品に含まれるタンパク質分解物中で既に見出されている。また、DPP IVはpterocarpus marsupium Roxb、Agonia cretica LとHedera nepalensis K. Kochによって阻害される[15, 16]。本研究では新しいDPP IVインヒビターとしてシアニジン3,5-ジグルコシドを同定した。アロニアジュース分画中のシアニジン3,5-ジグルコシドはDPP IVインヒビターとして働く主な成分であることを見出した。シアニジン、シアニジン 3-グルコシド、マルビジン、ルテオリン、アピゲニン、ケルセチン、ケンペロール、へスペレチン、ナリンゲニン、エリオシトリン、ゲニステイン、レスベラトロール、没食子酸、カフェイン酸はベリーやシトラスフルーツに含まれるDPP IVインヒビターとして報告されている[17]。DPP IVインヒビターが含まれる食品タンパク質加水分解物としてはアトランティックサーモンの皮、tuna cooking juice、日本の米ぬか、ゴーダチーズ、ミルクプロテインの報告がある[18]。以前の研究でアロニアジュースはアントシアニン配糖体としてシアニジン 3-ガラクトシド、シアニジン 3-アラビノシド、シアニジン 3-グルコシド、シアニジン 3-キシロシドを含有することが示された[19-24]。さらに、シアニジンとシアニジン 3-グルコシドはDPP IVインヒビターであることが報告されている[17]。我々はシアニジン3,5-ジグルコシドがシアニジンやシアニジン 3-グルコシドよりも強くDPP IVを阻害することを見出した。我々の結果と以前の研究結果はシアニジン3,5-ジグルコシドがアロニアジュースに存在する新しいDPP IVインヒビターであることを示唆している。

この研究は、Biochem Biophys Commun. 2015 Sep 25; 465(3)433-6に掲載されたIdentification and characterization of a dipeptidyl peptidase IV inhibitor from aronia juice.を、一部を省略して日本語に訳したものです。タイトルをクリックして原論文の全文を英文で読むことが出来ます。