動画

ブログ

 


SSL/TLSとは?

セキュリティポリシー

お電話でのお問合せ

0120-417-918

ヨイナケヒヤ

更新2012.2.1

 

HOME委託研究日本の健康成人においてアロニア果汁摂取は食後血糖値の上昇を抑制する

委託研究

 この研究はClinical Nutrition Expeimental April 2017 Volume 12, Pages 20-26に掲載された英文論文を日本語に訳したものです。
 英文の論文は、こちらで読むことができます。

日本の健康成人においてアロニア果汁摂取は食後血糖値の上昇を抑制する

天使大学 看護栄養学部     
栄養学科研究科長・教授

医学博士 大久保 岩男

 アロニアベリーには抗酸化、肝臓保護、心血管保護活性を通して多くの健康効果の可能性が含まれており、糖尿病改善効果が示されている。最近、私たちはアロニア果汁に含まれる成分であるシアニジン 3,5-ジグルコシドがグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)やグルカゴン様ペプチド-1 (GLP-1)を分解するジペプチジルペプチダーゼIV(DPP IV)を阻害することを見出した。また、糖尿病・肥満モデルマウスを用いた研究では、アロニア果汁による糖尿病改善効果はDPP IVとα-グルコシダーゼの阻害によって起こることを明らかにした。本研究では、アロニア果汁を摂取した日本の健康成人において食後血糖値への効果を試験するために、経口食事付加試験を実施した。

 

実験方法

1.被験者と研究デザイン

 

 試験は30歳以上の健康な日本人37名(男性19名、女性18名)を被験者として行なった(表1)。試験方法は天使大学倫理委員会によって許可された(許可番号2012-29)。本研究はヘルシンキ宣言に基づいて行なわれ、オープンラベル、ランダマイズ、2期1方向クロスオーバー試験(UMIN000024581)であった。ランダム化には単純ランダム化が用いられた。OMTTは以下のように行なわれた。健康成人は食事前にアロニア果汁か水を摂取し、30分後に血糖値を測定した。その後、200gの米(295 kcal)を摂取し、30、45、60、75、90、120、150分後に血糖値測定を行なった(図1)。血糖値はパナソニックヘルスケア製グルテストエブリを用いて測定を行なった。食事を開始して150分間の食後血糖値の曲線下面積(AUC)を計算した。

2. 試薬

 

 アロニア果汁は中垣技術士事務所から提供された。アロニア果汁の組成と炭水化物は表2と3に示した。Gly-Pro-MCAとZ-Lys-Ala-Met-MCAはペプチド研究所から購入した。DPP IVとACEはブタ精漿から精製を行なった[7, 8]。グルテストセンサーはパナソニックヘルスケアから、α-グルコシダーゼはシグマ‐アルドリッチからそれぞれ購入した。他の全ての分析グレード試薬は和光純薬工業から購入した。

 

 

3. DPP IV活性測定

 酵素活性はAMCの蛍光測定により行なった。10μl の10 mM基質、100μl の0.5 Mトリス緩衝溶液(pH 9.0)、5ulの酵素溶液を加え、ミリQ水で合計1 mlとなるようにした。37℃で30分間インキュベートした後、0.2 M酢酸を2 ml加え、反応停止後、蛍光分光光度計にて分析を行なった。

 

4. ACE活性測定

 酵素活性はAMCの蛍光測定により行なった。10μl の10 mM基質、100μl の0.5 Mトリス緩衝溶液(pH 7.5)、5μlの1 M 2-メルカプトエタノール、20μlの酵素溶液を加え、ミリQ水で合計1 mlとなるようにした。37℃で30分間インキュベートした後、0.2 M酢酸を2 ml加え、反応停止後、蛍光分光光度計にて分析を行なった。

 

5. α‐グルコシダーゼ活性測定

 酵素活性はp-ニトロフェニル‐α‐D-グルコピラノシドを基質として測定を行なった。基質溶液はジメチルスルフォキシドに溶解して準備した。反応系は20 mM基質10 μl、150 mMリン酸緩衝溶液(pH 7.0)100 μl、酵素溶液10 μlをミリQ水で300 μlとし、37℃で30分間反応させた。PNP-グリコシドは96ウェルマイクロプレート分光光度計を用いて、405 nmで測定された。

 

6. 統計解析

 食後血糖のAUCは以前に述べられた方法を用いて計算した [9]。データは平均値±SEで表された。

結果

1. 被験者の基礎データ  表1に被験者37名(男性19名、女性18名)の基礎データを示しました。平均年齢は44.9±11.0歳、BMI (body mass index)は22.1±2.0であった。

 

2. 食事摂取負荷試験 (OMTT) におけるアロニア果汁摂取による食後血糖値上昇抑制  アロニア果汁摂取によって食後血糖値の上昇が抑制されるかを試験するために、OMTTを行なった(図1)。その結果、アロニア果汁摂取群で食後の血糖値上昇が抑制された(図2A)。アロニア摂取群における食後血糖値の上昇抑制は男女間で差がなかった(図2C、E)。男性、女性、男女のAUCは図2B、D、Fにそれぞれ示した。

 

A. 男性 (n=19), C. 女性 (n=18), E. 男性と女性 (n=37). AUC値はB.男性, D.女性, F.男性と女性に示した。*p<0.05, **p<0.01, ***p<0.001.

 

3. DPP IV、α-グルコシダーゼ、ACE活性の阻害  In vitroにおいてDPP IV、α-グルコシダーゼ、ACE活性は濃度依存的にアロニア果汁によって有意に阻害された(図3A-C)。アロニア果汁によるDPP IV、α-グルコシダーゼ、ACE活性の阻害割合はそれぞれ、35、75、95 %であった。

 

議論

 食後血糖値の上昇抑制は血管の保護と心血管疾患の予防のために非常に重要である。以前の研究でアロニア果汁を摂取したインスリン依存的および非依存的糖尿病患者において血糖値が低下することが示された[4]。私たちの以前の研究ではアロニア果汁を摂取した2型糖尿病・肥満モデルマウスにおいて血糖値の低下を示した[6]。これらの研究はアロニア果汁がヒトとマウスの糖尿病を改善する効果があることを示している。
 本研究において、アロニア果汁摂取によって健康な成人日本人の食後血糖値上昇が抑制されることを新たに見出した。さらにDPP IV、α-グルコシダーゼ、ACE活性は濃度依存的にアロニア果汁によって阻害されることも明らかとなった。私たちは以前にDPP IV、α-グルコシダーゼ活性が2型糖尿病・肥満モデルマウス小腸において阻害されることを既に報告している[6]。これらの酵素阻害は異なる過程を通して血糖値を減少させる。GIPやGLP-1のようなインクレチンはDPP IV活性阻害によって分解を受けなくなり、β‐細胞からのインスリン分泌を誘導する。一方、α-グルコシダーゼ活性阻害によって小腸上皮細胞へのグルコース輸送が減少する。アロニア果汁によるこれらの酵素阻害はインスリン依存的および非依存的糖尿病患者の血糖値低下を誘導するかもしれない[4]。アロニアメラノカルパ抽出物はメタボリックシンドローム患者の血圧を低下させることが報告されている[10]。ACE活性はアロニア果汁によって濃度依存的に阻害されるので、ACE活性阻害にはインスリン抵抗性と2型糖尿病の改善効果があることも報告されている[11]。また、2型糖尿病改善効果のメカニズムはアンジオテンシンIIを介したリポジェネシスと関連がある可能性についても以前に述べられている[12,13]。これらの以前の研究から、アロニア果汁によるACE阻害活性はレニン―アンジオテンシンシステムの阻害を通して2型糖尿病予防に導く可能性がある。

 以上の結果はアロニア果汁による3酵素の阻害が血糖値の低下に非常に重要であることを示しており、健康な成人日本人においてアロニア果汁はインスリン抵抗性、メタボリックシンドロームあるいは2型糖尿病の予防に役立つ可能性があることを示唆している。
 

参考文献

[1] Kulling ES, Rawel MH. Chokeberry (Aronia melanocarpa) –A review on the characteristic components and potential health effects. Planta Med. 2008; 74: 1625-1634.
[2] Badescu M, Badulescu O, Badescu L, Ciocoiu M. Effects of Sambucus nigra and Aronia melanocarpa extracts on immune system disorders within diabetes mellitus. Pharm Biol. 2015; 53: 533-539.
[3] Valcheva-Kuzmanova S, Kuzmanov K, Tancheva S, Belcheva A. Hypoglycemic and hypolipidemic effects of Aronia melanocarpa fruit juice in streptozotocin-induced diabetic rats. Methods Find Exp. Clin. Pharmacol. 2007; 29: 101-105.
[4] Simeonov SB, Botushanov NP, Karahanian EB, Pavlova MB, Husianitis HK, Troev DM. Effects of Aronia melanocarpa juice as part of the dietary regimen in patients with diabetes mellitus. Folia Med (Plovdiv) 2002; 44: 20-23.
[5] Kozuka M, Yamane T, Nakano Y, Nakagaki T, Ohkubo I, Ariga H. Identification and characterization of a dipeptidyl peptidase IV inhibitor from aronia juice. Biochem. Biophys. Res. Commun. 2015; 465: 433-436.
[6] Yamane T, Kozuka M, Konda D, Nakano Y, Nakagaki T, Ohkubo I, Ariga H. Improvement of blood glucose levels and obesity in mice given aronia juice by inhibition of dipeptidyl peptidase IV and α-glucosidase. J. Nutr. Biochem. 2016; 31: 106-112.
[7] Ohkubo I, Huang K, Ochiai Y, Takagaki M, Kani K. Dipeptidyl peptidase IV from porcine seminal plasma: purification, characterization, and N-terminal amino acid sequence. J. Biochem. 1994; 116: 1182-1186.
[8] Takeuchi K, Araki H, Sakaue T, Yamamoto Y, Fujiwara M, Nishi K, Ohkubo I. Porcine germinal angiotensin I-converting enzyme: isolation, characterization and molecular cloning. Comp. Biochem. Physio.l B Biochem. Mol. Biol. 2007; 146: 215-226.
[9] Thomas WMS, David JJA. The use of the glycemic index in predicting the blood glucose response to mixed meals. Am. J. Clin. Nutr. 1986; 43: 167-172.
[10] Broncel M, Kozirog M, Duchnowicz P, Koter-Michalak M, Sikora J, Chojnowska-Jezierska J. Aronia melanocarpa extract reduces blood pressure, serum endothelin, lipid, and oxidative stress marker levels in patients with metabolic syndrome. Med. Sci. Monit. 2010; 16: CR28-34.
[11] Sharma AM, Janke J, Gorzelniak K, Engeli S, Luft FC. Angiotensin blockade prevents type 2 diabetes by formation of fat cells. Hypertension 2002; 40: 609–611.
[12] Jones BH, Standridge MK, Moustaid N. Angiotensin II increases lipogenesis in 3T3-L1 and human adipose cells. Endocrinology 1997; 138: 1512–1519.

[13] Furuhashi M, Ura N, Takizawa H, Yoshida D, Moniwa N, Murakami H, Higashiura K, Shimamoto K. Blockade of the renin-angiotensin system decreases adipocyte size with improvement in insulin sensitivity. J. Hypertens. 2004; 22: 1977–1982.
前のページに戻る